ドリップコーヒーの入れ方 2 (中級編)

入れ方はすごく大事です

コーヒー豆を買っていただく立場のコーヒー店としては「コーヒーなんて簡単ですよ」と言いたくなるのですが、やはり淹れ方によって味は大きく変わります。これはレギュラー・コーヒーの宿命だと思います。

「せっかく飲むなら、少しこだわって、おいしいコーヒーを楽しみたい」と、感じていらっしゃる方は、是非この中級編を参考にして、おいしいコーヒーのコツをつかんで下さい。コーヒーが今まで以上に好きになること請け合いです。

文字と写真ですとお伝えしにくいのですが、店のコーヒー教室でどなたにもやって頂いている内容です。
また初級編よりも踏み込んでいるので、説明がどうしても理屈っぽくなってしまいますが、みなさんは頭で考えすぎないで、まずコーヒーを味わって下さい。そのほうがずっと早くあなたのコーヒーがおいしくなると思います。

実際にコーヒーを入れてみましょう

コーヒーを入れることに集中すると心が静まりますよね。

入れ始める前に、全体の流れを簡単に頭に入れておいて下さい。

  1. 準備
    【1】 (1)道筋を通して
    【2】 (2)道幅を拡げる
  2. メイン
    【1】 (3)泡を拡げて
    【2】 (4)高さを保つ
  3. 仕上げ
    【1】 (5)上下動を繰り返してから
    【2】 (6)終息に向かう

以上の6段階に分けて説明します。(基本編では3段階)

準備【1】 (1)道筋を通す (粉の中心線に湯の通り道を作ります)

コーヒーの淹れ方 準備【1】 (1)道筋を通す

ポットは回さずに、中心の一点のみに注ぎます。
(ひとさし、ひとさし、そっと注ぐ)

3,4回目に下に到達する位が良い。
(濃いコーヒーが少し落ちる)

下から落ちるコーヒーが止まったら(2)番へ

[注意]

湯は太すぎない!出来るだけ垂直に!
湯が粉を突き抜け、お湯に近い液が落ちてしまうと、こくのあるコーヒーは望めない。

[特徴]

初めはポットをぐるぐる回さない。まず中心線に湯をしみ込ます。


準備【2】 (2)道幅を拡げる (湯の通り道を同心円状に拡げます)

コーヒーの淹れ方 準備【2】 (2)道幅を拡げる

(1)番の後、間を空けずに(2)番を始める。
同心円状に、濡れている所と濡れていない所の、境目をねらうように注いで行きます。(3周位)

湯は(1)の時よりも細く、ふちまで湯を掛けない。
止めるときは必ず元に戻って中心にひとさし注ぐ。

ジワ~と膨らむのを、一呼吸、確かめたら(3)番へ

[注意]

(2)番ではフィルターに湯が掛からないよう特に気を付けて下さい。

[特徴]

粉のふちは乾いたまま残る。


~補足説明~

深煎りのコーヒーを濃く淹れたいときはとにかく(1)番(2)番で濃い液が出るようにして下さい。

メイン【1】 (3)泡を拡げる (まず少し盛り上げてから、一気に泡を拡げます)

コーヒーの淹れ方 メイン【1】 (3)泡を拡げる1

(3)番を始める目安は、最初から約30秒後です。
中心から注ぎ始め、五百円玉位の大きさで2周ほどさせて、粉を盛り上げます。

この時、湯は太めが良い。

[ヒント]

怖がって力のない湯を注ぐよりも、おおらかな気持ちでグ~と泡を盛り上げて!

[特徴]

湯の当たった所の泡が、わっと噴き出していないことに注目して下さい。慣れないうちは物足りないかもしれませんが、大丈夫です。


コーヒーの淹れ方 メイン【1】 (3)泡を拡げる2

粉が盛り上がったら、そのまま大きくポットを回し、全体に泡が広がるようにします。

同じ太さで、速く回せれば理想です。

必ず元に戻って中心にひとさし注いだら(4)番へ

[ヒント]

この時だけはフィルターに湯が掛かることを恐れずに、パァ~と泡の範囲を広げちゃいましょう。でも、わざわざ掛けることはありません(^・^)

[特徴]

ポットを回した時、一気に泡が出るのです。


~補足説明~

「大抵の入れ方によれば蒸らし段階としてまだ待っている」途中で注ぎ始め、いわば「蒸らし」と「抽出」を同時進行させるのです。しつこくない、香りの良い苦みを引き出せます。

メイン【2】 (4)高さを保つ (泡の高さを保つために、湯を連続して注ぎます)

コーヒーの淹れ方 メイン【2】 (4)高さを保つ

(3)番で盛り上がった泡の高さを保つように、しばらく連続して湯を注ぎ続けます。
(中断すると水位が下がってしまいます)

湯はふちから1センチ位の所まで回します。

泡の色が焦茶色から薄茶色に変わったら(5)番へ

[注意]

泡だけ見ていると、どんどん水位が上がってしまうことがあります!

[特徴]

(3)番(4)番は少しむずかしい所ですが、ここまでで主な味が抽出されるのです。


仕上げ【1】 (5)上下を繰り返す (何回かに分けて湯を注ぎます)

コーヒーの淹れ方 仕上げ【1】 (5)上下を繰り返す

泡の色が薄茶色に変わったら、注ぎ方を変えます。

(4)番の泡の高さになるまで、5百円玉位の範囲内に湯を注いだら、しばらく待つ泡が下がったらまた同じ高さまで注ぐ。
この作業を3,4回繰り返します。

[ヒント]

落ちるコーヒーが止まる直前に注げればベスト。

[特徴]

湯の高さを上げたままにしても結構でが、湯が少し下がる間に、ある種のこくが出るのです。でも、間が空きすぎて湯を切らすと、こくを通り過ぎていやみが出てしまいます。


仕上げ【2】 (6)終息へ向かう (止めるタイミング探り始めます)

コーヒーの淹れ方 仕上げ【2】 (6)終息へ向かう1

粉に膨らむ力がなくなってきたら中心の限られた範囲内に注ぐ(1円玉)

ほぼ連続してどんどん湯を注いで下さい。荒っぽくてはいけないのですが、時間が掛かり過ぎると渋みが出てしまいます。

[ヒント]

(5)番から(6)番への変わり目は微妙なので、あまり気にしないで結構です。

[特徴]

最後まで決してないがしろにしない。下手をするといやな味が出てしまうところです。でもおいしくするのに必要な味も出ています。


コーヒーの淹れ方 仕上げ【2】 (6)終息へ向かう2

泡の色が薄くなってきたら、一点に注ぎながら泡の表情を見ます。

泡が白く大きな物に変わったら、フィルターを外す。(しばらくすると消えてしまう力のない泡です)

この後は出がらしです。

ここまでで大体2分程度です。

[特徴]

「止めるタイミングを見つける」のは、むずかしいかもしれません。途中経過がある程度うまくいっていないと、白い泡がはっきり出ないからです。


~補足説明~

たぶん初めは、打ち切るタイミングの重要さを理解出来ないだろうと思います。ほとんどの方が、今まで「出がらし入りのコーヒー」を飲んで来られているので、その味をコーヒーだと思ってしまっているからです。
でも、本当に最後の数滴で味が一変するんですよ!
コーヒー教室で参加者に飲み比べて頂くと、全員がその差にびっくりされています。不思議なことに香りまでもが全然違うのです。

当店の入れ方の特徴

元来、コーヒーの入れ方は、「どんな味をめざしているのか」によって、違ってきます。私の入れ方は、私が飲みたい味を作るために必要な方法なのです。いずれにしてもコーヒーは入れ方のちょっとした違いが、味に出ます。ただし、雑味の多いコーヒー豆をお使いの場合は、違いが分かりにくいでしょう。あなた自身が試して、実感できた所から、取入れてもらえたらうれしいです。

「他で聞く話と違うけれど大丈夫かな?」という特徴

  • 無闇に泡を盛り上げない
  • いわゆる蒸らしの時間をあまり長く取らない
  • 周辺をあまり使わない
  • その他いろいろ

「あまり聞かないけれどこれは大事かな?」という特徴

  • 垂直の中心線を強く意識する
  • 止めるタイミングを重視する
  • 表面にごまかされず、泡の下で実際に起こっていることを問題にする
  • その他

私が飲みたい味

  • どんなに濃くても、意外に飲みやすい(刺激的な味がしない)
  • どんなに薄くても、お湯の味がしない(とろっとした舌触りを楽しめる)

湯の注ぎ方

【大原則】 湯をフィルターに掛けない!周辺部に太い湯が行かないように!

コーヒーの淹れ方 湯をフィルターに掛けない
~理由~

粉に触れている時間の短い湯が下に落ちてしまうので、お湯っぽい味になってしまう(こくが出ない)。

~解決法~

ポットを回すことにあまりこだわらないほうが良い。気を付けていれば、味は良くなるので、もしも掛かってしまった時はあまり気にしない。ポットを緩く持つ。肩の力を抜く。


【中原則】 湯は出来るだけ垂直に!意外と大切なのです。

コーヒーの淹れ方 湯は出来るだけ垂直に
~理由~

斜めの湯は粉の層を突き破ってすぐにフィルターに到着してしまう。結果直接フィルターに当てたのと近い影響が出る。

~解決法~

一般のイメージと逆ですが、首がやたらと長かったり、口の細すぎるポットは使わない。ポットを緩く持つ。肩の力を抜く。


【小原則】 湯は太すぎず、細すぎず!それが難しいんですよね。

コーヒーの淹れ方 湯は太すぎず、細すぎず
~太すぎが困る理由~

湯が下に潜り粉が浮いてしまう。さらには粉が反転してしまう。

~細すぎが困る理由~

抽出の局面に見合った、湯の量が必要なので、細ければ良いものではないのです。

~解決法~

太くなってしまった時はすぐに湯を止める。ポットを緩く持つ。気持ちの問題も含めて肩の力を抜く。慎重になり過ぎない。後はやはり回数が必要です。


ポットの扱い方

【同心円状に注ぎ、最後は必ず中心に戻る】

コーヒーの淹れ方 のの字
行き(赤い線)

よく言われるように、いわゆる「のの字」状に注ぐのですが、実際の動きは3周くらいになります。

帰り(青い線)

注ぎ終わりは必ず中心に戻って下さい。このことはすごく大切です。軽く考えずに必ず実行してほしいのです。
「丸描いてチョン」の要領で最後に中心に一投注いでも良いです。とにかく忘れないで!


【ゆるく持つ。肩の力を抜く】

解決法として同じことばかり言っていますよね。でもそれがすごく大切なのです。この追求編のほとんど全てと言っても過言ではありません。

【子供の水遊び】

これはコーヒー教室で良く使う言葉なのですが、お風呂などで小さな子供が無心で水遊びをしているところを思い浮かべて下さい。にこにこしながら、おもちゃのバケツからお湯を「じゃあ~」と訳もなくこぼしているような光景です。その子供になったつもりで湯を注げばよいのです。決して難しい顔をしないで、コーヒーと戯れて下さい。実際そのことだけでコーヒーの味は激変します。

【ポットの口は出来るだけ動かさない】

コーヒーを入れるとき、ポットの口は出来るだけ動かさず、必要最低限の動きで、湯を出したり止めたり出来ることが好ましいのです。

【口を動かしてしまうと良くない理由】

太さが調整しにくい。狙いが付けにくい。ポット内の湯が動いて湯が乱れる。その他。

【尻漏れにも注意】

気付かない内にしている尻漏れですが、上を目指すならクリアしたい課題です。尻漏れが味に及ぼすマイナスは、おそらく皆さんの想像以上です。解決方法はポットの口を下げずに、ポットのお尻を上げて注ぐことです。

【ネルフィルターを使うとき】

ネルフィルターは使いこなせば、高性能を発揮するスポーツカーみたいなものです。感度が高く、使い手のミスが結果に即出てしまうので、尻漏れなどにも特に注意が必要です。ちなみにネルフィルターを使う店には、ポットをあまり動かさない例が多いようです。

水についてのFAQ

珈琲はやっぱり水が一番大事なんでしょうね?

滅茶苦茶多いご質問(というより確認?)なのですが、私にはそうは思えません。もちろん水は大切です。でも他の要素をないがしろにして、水へのこだわりを口にしても空疎です。

<p>【私が考えているコーヒーのおいしさを決める要素の順番】

1番 コーヒー豆 (良心的で技術のしっかりした店を探す、好みの豆を見つける)
2番 入れ方 (むずかしく考える必要はないが、やはりこつは必要)
3番 水 (90点を95点に高めようという段階で問題にすべき)

軟水と硬水では、どちらがいいのですか?

荒っぽい二分法なのですが、これもよく受けるご質問です。どんな軟水なのか、硬水なのかを抜きにしては答を出せない筈です。でも一言で答えてしまえば軟水が良いでしょう。

市販の水を使った方がいいのでしょうか?

わざわざ買う必要はないと考えています。まして、ミネラルの多すぎる、或いは少なすぎる水は、コーヒー用としては不向きですので、気を付けて下さい!地域差はけっこうあるようですが、日本の場合、水道水を浄水器に通せば、充分実用になるのではないでしょうか。
ちなみに市販の水で具体名を出すなら、「ボルビック」はお奨めです。少なくとも私のコーヒーとの相性は良く、香りが明らかに高くなります。

※日本中の水道や市販の水を試したわけではありませんので、例外や他にも適した水はあると思います。

私自身の淹れ方も、これからまだ変わると思います。

新しい気付きがあった時は報告します。説明の仕方も、もっと工夫していくつもりです。

ご質問には出来るだけお答えするつもりです。 

メール

ご自身の考え方と違うのは怪しからん!という方が、もしいらしてもメールしないで下さい(^_^;)。意見の交換なら別ですけど、コーヒーは議論しても答は出ませんもの。